しかしもうそろそろ、この腕から解放しなければーーー。
「ユノが目覚めたら呼べって言われてるんだ、オズ兄様に。だから、またね、ユノ」
ゆのは、思わず離れていくテトの服の袖を握ってしまった。
「どうした?」
「・・・ううん、なんでもないの」
目覚めたときに傍にいてくれたことが嬉しかった。離れると思うと寂しい・・・。
「寂しいの、ユノ? でも大丈夫!オズ兄様をすぐ呼んでくるから」
そう言ってゆのの手を優しく離すと、テトは部屋を出ていった。
先程握られた服の袖をじっと見てみる。
なんだろう、この気持ちーーー
オズ兄様を呼びに行くことを躊躇しそうだ。
それでもゆのを待たせているテトは、足早に歩く。
「小型の鏡を使えばこんな手間いらないんだけど」
そうなのだ。テトは小型の鏡を持ち歩いている。しかしあの部屋で2人っきりのところをオズヴェルドに見せるのは、あまりよくないだろうと判断したのだった。
ーーーコンコンッ
「オズ兄様。テトです」
ーーーガチャッ
「どうした? 俺のところに来るなんて。クレア王妃に知られたら・・・」
「いえ、伝言だけです。ユノ様が目覚めました」
オズヴェルドの前で側室を呼び捨てにはできない。
「どうしてお前が・・・?」
「そんなことよりも、早く行ってあげてください。寂しがってましたから」
そのテトの言葉に深く聞くことを諦めたオズヴェルドは、ありがとうと言うと部屋を飛び出した。