「そんな風に無邪気に触れて、誘っているのか?」

「ち、違うから」


少女は色白な顔を真っ赤に染めて、瞳を逸らした。


「お前のほうがリンゴみたいだ」


チョコレート色の瞳が、ゆるい三日月を型どって、少女を見つめた。


「それで? 本当の名は?」

「・・・柊ゆの」

「ヒーラギ・ユノ?」


こくり、とゆのは頷く。


「名前を教えたんだから、離してよね」


そうゆのが言うと、男はあっさりと腕から解放してくれた。


「ユノ。お前はどこから来たんだ?」


男の真剣な表情に困惑してしまう。


「どこって言われても・・・」


ここは夢の続きなのだろうか?

確か、鏡に触れたら手が伸びてきてーーー

気がついたらここにいたのだから。


そう思ったゆのは、素直に答えていた。


「夢の中・・・かな?」

「夢の中、だと!?」


男は心底驚いているようだ。


「信じないでしょう?」


どうせ夢の続きだと思い、信じてもらえなくても別にいいや、と思っているゆのは、男の反応を気にはしなかった。


「もしかして、鏡に触れたか?」

「えっ」


なんでそのことを知ってるのーーー?
そう言いたげなゆのの表情から、男はゆのが鏡に触れたことを悟ったらしい。


「レヴァノン!」


男はベッドから降り、部屋の扉を開けて大声で誰かを呼んだ。