ここで歌うは君がため〜交わされた約束〜


ーーーギィッ、ガチャンッ


重苦しい扉が開き、古めかしい音が響き渡った。


「ユノ・ヒーラギ様・・・ですかな?」


ゆのは被告人であるがオズヴェルドの側室でもあるため、ホルンの呼び方には若干の戸惑いがみられた。


「はいっ、そうです・・・。えっと、遅くなってすみません・・・」


ゆのはあたふたとしていて、どうしていいか分からないといった顔をしている。



1日にも満たない時間離れただけで、こんなにも飢えてしまう。

ゆのの姿を目にしたオズヴェルドは、己の飢餓感に驚いた。

もう、ユノは手放せないーーー。

そのためにも、なんとしても無罪を獲得せねば・・・。



証言台へと促されたユノは、真っ直ぐな漆黒の瞳でホルンを見つめた。


「先程までカルディア・キッシュの裁判を行っていたのだが、彼女は貴女の歌の力で操られた、と言っている・・・。どうですかな?」


ユノは多少驚いたようだが、冷静に切り返した。


「そのような事実はありません。私にはその・・・歌の力なんてありません。送りの儀式のときに、いきなりカルディアさんに襲われたんです」

「何故襲われたと思いますか?」

「・・・オズの側室だからかと・・・」

「そのような事実はないと言っているが、何か反論はあるかね?」


被告人席に座るカルディアにホルンは投げかけた。


「そんな力はないだなんて、誰だって言えます。簡単な話ですよ? 歌わせればいいのよ」