立ち上がろうとするゆのはオズヴェルドの腕に阻まれる。
「離して、オズ」
「ダメだ。今行かせたらどうなるかわからない」
「大丈夫。忘れたの? 私には歌の力がある。しかもこんなことになったのは、私が自分で招いたこと・・・。だから、心配しないで?」
そうは言われても、今この手を離してクレア王妃に捕らえられたらゆのが安全だという保証はない。
なかなか解放しないことにゆのは痺れを切らした。
「オズヴェルド!」
「っ!」
オズ、ではなく。
そう呼ばれて思わず腕の力が緩んだ。
その隙に抜け出したゆのは、大人しく兵隊に捕らわれた。
「俺の側室だ。存外に扱うなよ」
それだけしか言えない自分が歯痒い。
「連れていけ」
クレア王妃の言葉とともにゆのは連れていかれてしまった。
