「嫌です! 私の歌は、お金儲けのためにあるわけじゃないっ!」


反抗的な態度をとったのは、それが初めてだった。



「そしたら・・・殴られて・・・」


ゆのも話すのが辛いのだろう。声も身体も震えている。


「お前は商品だからな。見世物なんだから、ちゃんと歌えって、そう言われて・・・」


信じられない話だ。父親としてだけでなく、人間として最低だ。


「そこからは心から感じたことを歌えなくなったの。自分を騙しながら、殴られないように自分の身を守るために歌ってた・・・」



このときから歌を聴きに来たオプションとして、ゆのの手にキスというのが始まった。

初対面の知らない人からキスを手に受ける・・・。ゆのはこのときの嫌な記憶から、ハジに手にキスをされたときに過剰な反応を見せたのだった。



14歳になってからは、子どもというよりは女という目で見られることが多くなった。

それに気付いた父親はニヤニヤしながらゆのに言うのだ。


「今日はお前を観賞用として欲しいと言ってきた客がいたぞ。今度は歌以外でも利用価値がないか考えるとするか・・・」


その言葉の意味がわからない年齢ではない。ゆのの心は完璧に壊れてしまった。