「悪いけど、まだ帰せないよ。手当しなきゃ」

「こんなケガ、気にしないで」

「それだけじゃない。私はまだ、約束を交わすことを諦めていない・・・」


この場に止めるために掴まれた左腕が痛い。


「オズ兄様に関わる話だと言ったでしょ? どこに隠したんだろうね?」

「何を?」

「ユノの時計だよ」

「・・・」

「時計がなきゃ召喚できない。この世界に来た時点で身につけているはずだ。最初にユノを見つけたのは、オズ兄様なんだろう?・・・どこに時計を隠したのかな?」



オズが、時計を、隠したーーー?



「オズ兄様の周りを調べてごらんよ。時計が出てくるかもしれない」

「勝手に調べるなんて・・・」

「じゃあ、聞いてみる? 時計をどこに隠したの?って・・・。まぁそんなんじゃ、素直に教えてくれるわけないけどね」

「私は時計なんかなくても困らない」

「元の世界に帰る方法は分からないとされているけど、これだけは確かだ・・・。時計がなきゃ、ユノは帰れないよ」

「なんでそんなことがわかるの?」

「私は本が好きなのは知ってるね? 幼い頃から図書室に足を運んで文献を読みあさってきたんだ。それと・・・」

「それと、なに?」

「とある人に教えてもらったんだ」


嫌な予感が止まらない。


「ツバルがね、母様の話を盗聴したんだ」