恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ

「い、痛いっ!」
ミチカの指が腕に食い込む。肉を引きちぎりそうなほど強い力に、激しい痛みに襲われた。
『アノ女、アタシヲ置イテ生キ延ビヤガッタ!…呪イ殺シテ ヤロウトシタラ、親ガ霊能者ヲ頼ンデ近ヅケナイヨウニ シヤガッタ!チキショウ!』
ミチカが怒りのままに私の腕をきつく強く握ると、骨がきしんだ。あまりの痛さに、私は失神しそになった。すると森田がミチカの手をわしづかんだ。
「放せ、化け物!」
『一人デ魔界ニ棲ムノハ嫌ダ!寂シイ!メル友ノ代ワリニ春乃サン、一緒ニ来テ下サイ!』
「いやっ!行かない。絶対行かない!」
『春乃サンハ特別大切ナ人ダカラ、魔界ノ住人ジャナク、私自ラ手ヲカケテ魂ヲ抜イテアゲル。ダカラ一緒ニ魔界ヘ来テ下サイ。ソシテ、コレマデ苦シメテ来タ奴ラヲ、呪イ殺シテヤリマショウ』
「いやっ!呪い殺すなんて絶対いやっ!殺したいほど憎んでいる人なんていない。そんなひどい事したくない!」
私は無我夢中になってミチカの手を振り払おうとした。だがやはり、できない。足を突っ張って魔界の穴に連れ込まれるのを阻止しようとするので精一杯だ。それでも一センチ、二センチと近付いてゆく。
 ふと見れば、残りあと一、二メートル。マジで、ヤバイ。
 ミチカは森田に腕をつかまれ、私に足を突っ張られながらも、ジワリジワリと動いていく。
(でも、何とかねばらなきゃ…ねばらなきゃ死んでしまう!)
私は今まで生きてきた仲で、一番力を振り絞った。
「ま、待て!化け物っ!春乃は渡さないぞっ!」
父がフラフラしながら近付いてきた。背中を丸め、右手でおなかを抱きしめ、足下はおぼつかない。まだ椅子やテーブルにぶつかった時の痛みが、引いていないのだろう。それでも私を助けるために、気力を振り絞ってやって来てくれたのだ。父の愛情を思うと、嬉しくて涙が出そうだった。