恐怖へいざなうメールはいかが~from.ミチカ

 ミチカは『永遠の友達になりたい』と言っていた。『永遠』ということは、きっと魔界にずっといると言う意味だろう。
 私は狂ったように、ミチカに捕まれた腕を上下に動かした。しかし、ミチカの手を振り払う事ができない。両足で床に突っ張っても見るが、足首やふくらはぎ、太ももが痛くなるばかりで、前へ進むのを止められない。ジリッ、ジリッと、魔界の入り口へ近付いていく。
「今川さん!」
「春乃、大丈夫か?」
森田と父、母が側へやって来た。父と母は店内に突然出現した魔界への入り口を見たとたん、ひどく困惑した顔で私を見た。
「今川さん!」
「春乃、大丈夫か?」
「あ、あれは何なんだ?」
「魔界への入り口です」
「魔界!」
父と母は森田の言葉を聞いて叫んだ。
「悪霊など、悪い霊が沢山棲んでいる、光が届かなくて暗くて陰気な世界です。みんな、自分勝手なやつらばかり。真っ白で純粋な魂も、すぐ下卑た色に染められ、この少女のように悪さをするようになります。いい事なんて、何もありません」
「春乃をそんなところへ行かせられるか!」
父は顔を真っ赤にして叫んだ。
 森田、父、母は顔を見合わせうなずくと、父がミチカを前から抱きしめ、森田が右腕を、母が左腕をつかんだ。ミチカの前進を阻止する気らしい。化け物ミチカも、大人三人に押さえつけられ、さすがに身動きが取れない。
『放セ、人間!コノ女ハ私ノモノダ!』
「バカな事を言うな!春乃は私達の娘だ!お前みたいな化け物に渡すわけないだろ!」
『父親ノアンタハ、ソウ思ッテイルカモシレナイガ、母親ハ ソウ思ッテイナイ。自分ノ事デ精一杯ダ。産ンダカラトリアエズ育テテイルダケ。愛シテナンテイナイ!』
「そんなことはない。春乃をちゃんと大切に思っている。愛しているわ!」
「・・・!」
母の思いもしなかった一言に、私はビックリした。私は食い入るように母を見た。
 母の目は真剣だった。
「確かに私は自分の事で精一杯だよ。春乃を気にかけてやるだけのゆとりなんて、ほとんど無い。毎日忙しくて、すぐちょっとした事でカッとしてしまう。でも、産んだからとりあえず育てているなんて思っていない。ちゃんと春乃が大切だと思って育てている!」