「い、やだ。魔界になんて行きたくない。ここにいたい!まだやりたいことが沢山あるの!」
『人間ハ春乃サンノ思イ通リニ ナラナインデショウ?メールノ返信ダッテ、気ガ狂イソウナホド待ッテイルノニ、ナカナカ返シテコナイ。ミンナ自分ヲ幸セニスル事デ精一杯。冷タイ奴ラ バカリ。オマケニ イイ男モ イナイ。踏ンダリ蹴ッタリ』
私は図星を刺され、ビックリした。彼女に私の心が見えているのかと思った。
『オマケニ、オ母サンハ自分ノ事ニ忙シクテ、小サイ頃カラ、チットモ カマッテ クレナカッタ。スゴク寂シクテ気ガ狂イソウナノヲ、端デ見テイルカラ気ズイテイルハズナノニ。自分ノ発言ガ正シイト思ッテイルカラ、春乃サンノ意見ニ耳ヲ傾ケテモクレナイ。ダカラ春乃サンハ、オ母サンガ憎クテ ショウガナイ…デキルナラ、一生会イタクナイト思ッテイル』
「…な、何言っているのよ。あたし、そこまで勝手じゃない!」
『日本ハ今、一億三千万モノ人ガ住ンデイル。ソノ大勢ノ中カラ春乃サンヲ選ンダノハ、春乃サンガ自分ヲ幸ニスル事ヲ一番ニ考エテ、ソレヲ阻モウトスル他人ニ スゴイ憎シミヲ抱イテイタカラ。魔界ノ住人ハ、負ノエネルギーヲ糧ニ生キ、仲間ヲ集メテイル。春乃サンノ人ヲ憎ム エネルギーガ アレバ、私達ハ モット仲間ヲ増ヤス事ガデキル』
「な、仲間を増やしてどうする気だ!こっちの世界をお前達の物にしたいのか!」
森田は叫んだ。いつもオドオドしている彼にしては、荒げた声だった。それだけミチカの手をはがすのに必死なのだろう。
 確かに状況は逼迫していた。私の頭はじょじょにボーッとしだし、声がきづらくなっている。首を絞められているせいだ。意識を失うのも、時間の問題だろう。
 そして、命を失うのも時間の問題だった。
「…は、春乃っ!」
「あんた、何をしているんだっ!」
突然、父と母の叫ぶ声が聞こえた。自動ドアの開閉音がしてから聞こえたと言う事は、店の出入り口から入ってきたのだろう。しかし、二人の姿を確認したくてもできない。声のした方を見たら、ミチカと森田の顔が壁のように立ちはだかっていたのだ。おまけに、目の前に火花が飛び散りだしよく見えない。