「なっ、何が?」
「今川さんを引きずってでも早く連れ出すべきだった。僕一人の力じゃ、どうにもできない…」
「だから何がよ!」
とたん、自動ドアが開く音がした。私は何気なくドアの方を見た。
しまった自動ドアの前には、身長百六十センチくらいでセミロングヘアーをした細身の女子高生が立っていた。彼女はこの地区の進学校の制服である、秋冬用の濃紺のセーラー服を着ていた。顔はうつむいている上、長い前髪に隠れ見えない。
だが、変だった。彼女の存在も包む空気も。彼女の周りだけ空気が凍ったように見える。森田を見れば、目を最大限に開き、ワイシャツの上からお守りをきつく握り、ガタガタと震える体を抱きしめていた。額には、脂汗がにじんでいる。
私は、ハッとする。そして、もう一度彼女を見た。彼女はゆっくりと顔を上げた。
「ひっ…」
その顔は紙のように真っ白で、明らかに血が通っていなかった。口の端からは血が流れ、細い首には太い縄の模様がクッキリとついていた。
まるで首つり自殺した人のようだ。いや、きっとそうなのだろう。だから顔はまったく血の気が無いのだ。
―たぶん彼女は死んでいる。いや、絶対死んでいる…―
私は森田のようにブルブルと震える手でお守りを服の上から握りしめた。心臓は爆発してしまいそうなほどバクバクと激しく鼓動を繰り返している。しかしその鼓動が『私は生きている』と言うことを、唯一教えてくれていた。
―もしかしたら、数秒後には感じられなくなるかもしれない。―
(イヤ、そんなのイヤ。まだ死にたくない。死にたくない!)
私は強く願った。願えば、ヘドロに足をとられたように身動きの取れない状況から脱出できると思って。
だって、目の前に『ミチカ』がいる。現れた彼女は名乗らずとも、出で立ちからミチカだとわかった。
今日の昼に来たメールが、頭の中を過ぎった。
「今川さんを引きずってでも早く連れ出すべきだった。僕一人の力じゃ、どうにもできない…」
「だから何がよ!」
とたん、自動ドアが開く音がした。私は何気なくドアの方を見た。
しまった自動ドアの前には、身長百六十センチくらいでセミロングヘアーをした細身の女子高生が立っていた。彼女はこの地区の進学校の制服である、秋冬用の濃紺のセーラー服を着ていた。顔はうつむいている上、長い前髪に隠れ見えない。
だが、変だった。彼女の存在も包む空気も。彼女の周りだけ空気が凍ったように見える。森田を見れば、目を最大限に開き、ワイシャツの上からお守りをきつく握り、ガタガタと震える体を抱きしめていた。額には、脂汗がにじんでいる。
私は、ハッとする。そして、もう一度彼女を見た。彼女はゆっくりと顔を上げた。
「ひっ…」
その顔は紙のように真っ白で、明らかに血が通っていなかった。口の端からは血が流れ、細い首には太い縄の模様がクッキリとついていた。
まるで首つり自殺した人のようだ。いや、きっとそうなのだろう。だから顔はまったく血の気が無いのだ。
―たぶん彼女は死んでいる。いや、絶対死んでいる…―
私は森田のようにブルブルと震える手でお守りを服の上から握りしめた。心臓は爆発してしまいそうなほどバクバクと激しく鼓動を繰り返している。しかしその鼓動が『私は生きている』と言うことを、唯一教えてくれていた。
―もしかしたら、数秒後には感じられなくなるかもしれない。―
(イヤ、そんなのイヤ。まだ死にたくない。死にたくない!)
私は強く願った。願えば、ヘドロに足をとられたように身動きの取れない状況から脱出できると思って。
だって、目の前に『ミチカ』がいる。現れた彼女は名乗らずとも、出で立ちからミチカだとわかった。
今日の昼に来たメールが、頭の中を過ぎった。

