「ねぇねぇ、ミサっちー」

「んー?」



お花紙で作った花をドアに飾り付けしているのは、私と歩夢の二人。

視線はドアに向けたまま作業を進め、歩夢の言葉を待つ。



「1日目さー、俺と一緒に回らない?」



……え?



「私と歩夢が? 二人で?」

「そ。 俺と二人で」

「……いや、でもさ。 さっき女の子たちに誘われてたじゃん。 で、オーケーしてたよね?」



飾り付けを始める前、歩夢は同じクラスの女の子たちと喋っていた。

その内容っていうのが、『学園祭一緒に回ろう』というものだった。


歩夢は『いいよー』って返してたよね?

なのに、なんで私……?



「約束したのは2日目なんだ」

「……え、2日目って……コンテスト出るんだよね?」

「うん、だからその前にみんなと回る。 それでね、1日目はミサっちと回りたいなって思って」


「いやいやいやっ、1日目こそみんなと回ればいいじゃん。
2日目なんてコンテストの準備でバタバタするでしょ? 14時になったら着替えとかしなくちゃいけないじゃんっ」



2日目は朝9時から11時まで段ボール迷路の仕事して、そのあとにみんなと回るってことだよね?

で、14時にはコンテストの準備……。


たった3時間のうちに女の子数人とあちこち回るって、かなり時間少ないじゃん……。



「1日目にみんなと回れば? 迷路の担当が11時から13時までだから、微妙っちゃ微妙だけど……。
でも朝の時間と午後の時間に楽しめるじゃん。 17時まで回れるんだよ? 2日目より いっぱい一緒に回れるじゃん」

「だからこそ、ミサっちに声かけてるんだよ?」

「……へ?」



歩夢がニコッと笑って私を見た。

その瞳から、目を逸らすことが出来ない。



「俺と二人で回ろうよ。
みんなと回るよりさ、俺はミサと回りたいんだよ」