「私、巻き込まれたわけじゃないよ。 むしろ、巻き込んじゃったのは私だよ」
「違うって。 俺が巻き込んだんだよ」
「そうじゃなくて、私がっ……」
「いや、俺がっ……」
……と、いつまでも終わらない謝り合戦。
そんな私たちの間に入ったのは、呆れた顔の歩夢だった。
「別にどっちだっていいじゃん、二人とも遅刻せずに済んだんだから」
焼きそばパンを食べながら、なんでもないような顔で歩夢はそう言った。
……いや、まぁね、確かに二人とも遅刻せずに済んだ。 それは本当によかったと思ってるよ。
でもさ、ちゃんと謝らないと気が済まないっていうかなんというか……色々あるじゃん。
その『色々』を説明しろって言われても、上手く説明は出来ないけど……。
「それよりもさ、中庭のど真ん中で頭下げ合ってるのはかなり笑えるよ? ていうか笑われてるよ?」
「うっ……」
確かに、周りの人に結構笑われてしまったかも……。
チラリと周りを見た旬ちゃんも、ばつが悪そうに頭を掻いた。
「で、二人は何も食べないの?」
無邪気な歩夢が、ニコッと笑いかける。
「……食べないっつーか、家に弁当忘れた」
「……私も忘れた……」
慌てて出発したために、お母さんが作って冷蔵庫に入れてくれていたお弁当を持ってくるのを忘れてしまった。
多分、旬ちゃんも同じなんだと思う。
「……購買行って、なんか買って食うか」
「そだね……そうしよっか」
萎れた花のように、私たち二人に元気はない。
ていうか、この状況で元気な方がおかしい。
お弁当を食べる晃太くんとマーくん、そして焼きそばパンを食べ終えた歩夢に手を振り、私たち二人は購買へと向かった。