「ちょ、何っ……」

「襲われたい願望があるなら俺が襲ってあげるよん」

「そんな願望ないしっ」



歩夢から離れようと もがくけれど、歩夢は私の体を離さない。

……体は密着していて、歩夢の顔もメチャクチャ近い。



「ずーっと布団の中だから、『抱いて?』って俺を誘ってるんでしょ?」

「……誘ってないから」

「でもさぁ、こういうシチュエーションっていいよね。
布団の中で抱き合って、チューとかしちゃったりして?」


「馬鹿、いい加減にしてよっ」



唇を突き出して、わざとらしく『チュー』をしてこようとする歩夢。

その顔に手のひらを押し当て、腕を目一杯に伸ばして距離を取る。



「起きるから離れてよ、この馬鹿っ」

「冷たいなぁ。 あ、着替え手伝ってあげようか?」

「 け っ こ う で す !!」



けらけらと楽しそうな歩夢がようやく離れたから、私も体を起こして立ち上がった。

……なんか、最悪の朝だ……。



「これからは毎日、俺がチューして起こしてあげる」

「そんなの要らないからっ」



相変わらずの笑顔の歩夢を部屋から追い出し、ため息とともに着替えを開始した。