「ねぇ旬ちゃん」

「ん?」

「学校のベランダでさ、私の髪をグシャグシャってした時……あの時、本当は何か言おうとしてたの?」



すぐ近くに居る旬ちゃんの顔をジーッと見つめる。

それに対し、旬ちゃんは首を横に振った。



「別に何も言おうとはしてなかったけど、でも、なんだろうな……なんかイヤだった」

「イヤ?」



それってどういうことだろう? と首を傾げる私と同じように、旬ちゃんも首を傾げる。

……自分の感情が、自分自身でもよくわからないみたい。



「なんかこう……『イラッ』としたんだよな。 まぁ、何に対しての『イラッ』なのかは わかんねぇけどな。
で、それと同時に『ウワァー』っていうか『グワァー』っていうか……体ん中で何かがバァッと込み上げてくる感じだったんだよ」

「……うん、全然 意味わかんないね」

「……だよな、俺もよくわかんねーもん」



旬ちゃんは、あの時 どういう気持ちだったんだろう?

ウワァーとかグワァーとか言われても、全然わからないんだけど……。






「……まぁ、とにかくだな、」

「うん」

「俺はミサの頭を撫でたくなった。 それだけだよ」


「ん……わかったような、わからないような……」

「正直 全然わかんねーな」

「……だよねぇ……」



と、結局よくわからないままにその話は終了となった。