……私は、バレーボールがぶつかりそうになった時に藤沢くんに助けてもらって。
その時に私は、藤沢くんのことを好きになった。
結局、そのあとはマトモな話もせず、失恋してしまったけれど……でも、あれは確かに恋だった。
初恋だと思っていた。
だけど……今もう一度『初恋か?』って考えたら、違うかもしれない……。
……確かにあれは恋だったけれど、『ただそれだけ』という感じがする。
「旬は、自分の初恋を覚えてる?」
……晃太くんの問いかけに、旬ちゃんは首を小さく横に振った。
「俺は、恋とかはよくわからない。 ……いや、『わからなかった』と言うべきか。
ミサのことは好きだったけれど、それは幼なじみとしてのものだったし……かと言って、他の女を好きだと思ったことはない。
あ、美玲は面白くていい奴だから好きだけど、アレは恋じゃねぇから もれなく論外な。
……今はミサのことが幼なじみ以上に好きだけど、それを初恋と言えるかどうかは微妙な感じ」
ガシガシと頭を掻いたあと、旬ちゃんは何かを思い出したかのように私を見た。
「でも、1個だけスゲー覚えてることがあるよ」
「え?」
「みんなと一緒に公園で かくれんぼ してさ、俺ら同じところに隠れてたんだよ。
その時にミサが俺の手をギュッと握り締めたんだ。 だから俺、その時に……──」
その時に。
そう言った旬ちゃんは、一瞬の間のあとに微笑んだ。
「──……その時に、『守ってやらなきゃ』って思った。 『ミサと一緒に居られるのは俺だけだ』って、そう思ったんだ」



