「ちなみに俺の初恋はねー、晃太兄んとこのお母さんっ!!
メッチャ優しいし料理も上手いじゃん? それにあの笑顔っ!! ニパッと笑う顔がスゲー好きでさぁ、今でも告りたいって思うもん」
「……え、実の息子としてはメチャクチャ複雑なんですが……」
「あははっ、なんもしないから安心しときなー? んで、晃太兄の初恋の相手は?」
ニコニコと笑う歩夢と、少し考える顔の晃太くん。
……なんで、歩夢や晃太くんの初恋の相手の話になってるんだろう……。
「俺は、小1の時の担任の先生かな。 学校生活に馴染めるか不安だった時に『大丈夫だよ』って笑ってくれたのが嬉しかった」
「おぉー、初恋って感じだねっ!! じゃあ次っ!! 正人の初恋はー?」
歩夢の視線がマーくんに向くのと同時に、マーくんはビクッと体を震わせた。
「……俺は別に、初恋とかそういうのは……」
「あー、オッケーオッケー、正人の初恋はミサっちね」
「……なんで勝手に決めるんだよ」
「だってミサっちのこと好きっしょ? ミサっちだけを見てきたってことは、初恋の相手はミサっちじゃん」
「……」
相変わらずの笑顔の歩夢と、何も答えないマーくん。
マーくんはどこか困ったように私を見たあと、やっぱり何も言わないまま目を逸らした。
「ふっふっふっ、わかりやすい男だねぇ。 ……って、殴るのはなしっ!! 蹴るのもダメっ!!」
……歩夢の腕を殴り、蹴り飛ばそうとしたマーくんから距離を取った歩夢は、私と旬ちゃんを見た。
「とにかくさ、自分で『初恋だなぁ』って思えば初恋なんだよ。 その相手と何かがあった。 だからこそ恋をしたわけだろ?」
「……何かがあったからこそ、恋をした……」
「藤沢に恋をした時、ミサっちと藤沢の間に何かがあった。 だから恋に落ちたんじゃない?
それを『初恋』だと言えば初恋だし、違うと言えば違う。 それは本人次第だよ」



