高橋さんと会って色々なことを話すために ここに来たのかな?

と、思ったけれど、旬ちゃんは首を横に振って微笑んだ。



「アイツが居るなんて知らなかったよ。 俺はただ、ミサをここに連れてきたかったんだ」



ゆっくりと歩き始めた旬ちゃんの隣に並び、同じスピードで歩き続ける。

風は相変わらず強くて、屋上に居た人たちはほとんど中へ行ってしまった。


高橋さんたちも中に行ってしまったみたいで、私たちの近くには誰も居ない。



「ほんとはな、宝探しゲームに参加して、自然な感じで屋上に来る予定だったんだ」

「……小さい子向けのゲームなら、私たちは参加出来なかったんじゃない?」

「俺は実行委員だよ? そのへんは ちゃんと担当者と話してたから大丈夫」


「……それで? ここに来て どうするつもりだったの?」



ゆっくり、ゆっくりと歩を進め、旬ちゃんはフェンスに寄りかかった。



「これ見て」

「え?」



制服の内ポケットから取り出されたのは……写真……?



「覚えてない? ガキの頃さ、俺たち ここで写真を撮ってもらったんだよ」



花束を持った私を中心に、左側に歩夢と晃太くん、右側には旬ちゃんとマーくんが並んでいる。


……私、コレ知ってる……。



「覚えてる……ううん、思い出した……」



……この花束は、ウエディングドレスを着たお姉さんにもらったんだ。



──『私ねー、大きくなったら○○くんのお嫁さんになるのっ』



……純白のドレスを着た綺麗なお姉さんを見たから、私は『お嫁さん』の話をしたんだ。