「ほんとにね、昨日泣いた時間を返して欲しいよ。 マサくんがあんなこと言わなきゃ、もっともーっと楽しい学園祭だったのに」
「うー……ゴメン。 でもさ、ほんっとベタベタしてたんだよ? 学園祭の準備の時からずーっと二人はベタベタしてたんだよ?
俺じゃなくても『二人は付き合ってんのか?』とか思ったはずだよ?」
「でもマサくんが悪いっ!!」
「……すみませんでした……」
体を小さくしながら頭を下げるマサくん。
マサくんの方が年上なのに、なんだか小さい子供みたい。
「……マサくん、ごめん。 ほんとはね、マサくんに感謝してるんだよ」
これ以上いじめたら さすがに可哀想だ。 ということで、私の想いを伝えることにした。
「マサくんと一緒に居たからこそ、私は『旬ちゃんが好き』って気付けたんだ。
そうじゃなきゃきっと、一人でうじうじと訳のわからないことで悩んでたと思う。
『好き』って気付けたのは、マサくんが真っ直ぐに導いてくれたお陰だと思ってる。 だから、ありがとね」
昨日一緒に過ごした時間は、全然無駄なんかじゃない。
そう思うから、私はマサくんを見つめた微笑んだ。
「……俺は、全然何もしてないよ」
どこか照れたように言ったマサくんは、私の髪をクシャッとしてから微笑んだ。
「俺はたまたま一緒に居ただけで、全然何もしてないよ。
俺なんかよりもさ、晃太や歩夢、マーくんの方がいっぱい色々とやってくれてるよ。 な、歩夢?」
「ちょ、ここで俺に振る!? なんでここで俺なのさっ」
「だって歩夢、いろんなこと頑張ってたんだろ?」
「頑張ってねーよっ」
ニッと笑うマサくんと、口をへの字に曲げる歩夢。
……頑張ってたって、どういうこと?



