「……まぁ別にいいや。 俺はどんな時でも ちゃんと答えるから、なんかあったら 俺に聞け?」

「……うん、ありがと。 で、お宝はどこ?」

「しつけーな、それは言えんっ」


「矛盾してるよ?」

「うるせーな、知るかボケっ」



なんて言いながら、私たちは笑い合う。

暗く重たい雰囲気はすっかり消えていて、涙も今はもう流していない。

二人で過ごす時間が本当に本当に楽しかった。



「あ、ヤバい。 今14時40分じゃん」

「え?」



ふと、携帯で時間を確認した旬ちゃんが『しまった』という顔で私を見た。



「宝探し自体は17時までやってるけど、参加の受付は14時からの30分だけだったんだよ。 賞品に限りがあるから、先着限定60人」

「……えっ、じゃあもうアウト!?」

「アウト、だな」



そんな……私の財宝が……。



「でもまぁ、子供向けの簡単なゲームだし」

「子供向け……って、子供向けのゲームに私を参加させようと思ってたのっ!?」

「いやー、ミサが喜びそうな企画だなーって思って提案したら『小学生向けのイベントだね』って満場一致で決まってさ」


「……旬ちゃんは、それを隠しながら私を誘ったわけですか」

「隠してないよ。 聞かれなかったから言ってなかっただけ」



……この、馬鹿男……。



「旬ちゃん頭 出して」

「あ?」

「ぶん殴るから頭を出してください」


「ちょっ、暴力反対っ」

「暴力じゃないよ、軽いスキンシップだよ」

「目が怖いっつーの!!」



にっこりと笑う私に対し、旬ちゃんは顔を青くしながら後ずさり。

だけどすぐ、壁によって逃げ道を奪われた。



──旬ちゃんの頭をバシーンと叩く音が体育館裏に響いたのは、その数秒後のことだった。