旬ちゃんはなんとも思ってないとしても、高橋さんは旬ちゃんのことが好きだよね……?
なのに、このまま放っておいていいのかな……。
「確かに俺と美玲は、昨日ずっと一緒に過ごしてた。
同じタイミングで同じ仕事をして、同じ時間にメシを食って、同じ場所で笑ってた」
「……」
「それってさ、アイツも俺と同じで、好きな奴と一緒に過ごす時間を作るためだったんだよ」
……え?
好きな人と一緒に過ごす時間を、作るため……?
「美玲には大学1年生の彼氏が居るんだよ。
その人は美玲の幼なじみで、付き合い出したのは美玲が高1の時だったらしい」
「……えぇっ!?」
「俺もこの前 知ってスゲー驚いたよ。 学校に居る時の美玲は彼氏の“か”の字すら感じさせない女だったから。
それに、『私は一生独身を貫くっ!!』とか言って笑ってた女だから、ほんとビビったよ」
うそっ……。
で、でも高橋さん、旬ちゃんとあんなに楽しそうにしてたのにっ……!?
「彼氏は別の高校出身でな、今まではずっと学園祭の日程 丸かぶりだったらしい。
でも、彼氏が高校を卒業した今は、やっと二人で過ごせるんだ。 『高校最後の学園祭を初めて二人で回れる』ってスゲー喜んでたんだ」
「……あのさ、旬ちゃん。 高橋さんに彼氏が居るのを知ってるのって、旬ちゃんだけ……?」
「うん、俺だけ。 『クラスメートに知られるのは なんか恥ずかしい』って言うから黙ってたんだよ。 まぁ、今はもう知られちゃっただろうけど。
でな、俺と同じように今日をフリーにするって言ってたからさ、俺が仕事のサポートしてたんだ。
女一人に大変な作業は任せられないじゃん? それに、二人でやった方が早いし楽だし」
……ハァ……。
なんだ、そうだったんだ……。
二人は本当に、全然なんでもない関係だったんだ。
というか、『秘密を共有してる』から あんなに親しそうに話してたのかもしれない。
……それはそれで ちょっと嫉妬しちゃうけど……でも、『何もない』っていうのは本当だったんだ。



