いつも隣に居た旬ちゃんが、あの日は遠いところに居た。
もう今までみたいには話せなくなる。って思ったんだ。
……そう思った時、私は自分の気持ちに気が付いた。
「……私、旬ちゃんのことが好きなの。 好きって気付いたの。 でも、高橋さんにかなうわけがない……私が隣に居ても、旬ちゃんはあんな風には笑わないから……」
……だから『幼なじみで居よう』って決めたんだ。
『幼なじみのまま過ごしていこう』って思ったんだ。
「……なのに、どうして旬ちゃんは私に『好き』って言うの?
私と居る時よりも、高橋さんと一緒に居た方が楽しそうだったのに……」
「美玲は同じ実行委員だから、って言っただろ」
「親しそうに名前で呼び合ってるのに、それでも違うって言うの……?」
「じゃあもう名前では呼ばない。 それでいいだろ」
「『じゃあ』って……私に言われたから変えるなんて、そんなの変だよ。 私に気を遣って自分の気持ちを隠すなんて、そんなのおかしいよ……」
そう言った時、旬ちゃんは私を抱き締めていた手の力を抜いた。
私たちの間に少しだけ空間が出来て、お互いの目を見つめ合う。
「隠してないよ。 俺は何も隠してない」
「……」
「あのな、ミサ。 俺と美玲は本当になんでもないし、この先 何かが起こることもないよ」
「でも、マサくんが……高橋さんは旬ちゃんにベタ惚れ、って……」
「んなもん知るか。 アイツが勝手にそう思ってるだけだろ」
ペシッ、と軽く頭を叩かれる。
旬ちゃんは口をへの字に曲げて、どこか怒ったような顔をしていた。
「昨日会ったばかりの奴の言葉よりも、俺の言葉を信じろよ」



