「……ミサ、少しでいいから聞いて」
旬ちゃんの手が、そっと優しく私の頭を撫でた。
その顔も優しくて、いつもの旬ちゃんと何も変わらなかった。
「俺はここに居る。 ミサと一緒に居るよ」
「どう、して……」
「学園祭2日目は一緒に回るって約束しただろ?」
「でも旬ちゃんはっ……──」
「好きな人と一緒に回ればいい。 さっき そう言ったのはミサだよな?」
「──……え?」
好きな、人……?
「好きだから一緒に居るんだよ。 好きだから構うんだよ。 『大嫌い』って言われても俺はお前が好きだ。
これ以上、ミサと離れたくねぇんだよ」
「……わた、し……?」
「うん。ミサが好きだ。 大好きなんだよ」
「……」
「頼むから『消えて』なんて言わないでくれ。 俺は消えたくない。 ミサのそばに居たい。 ずっと一緒に居たいんだ」
ずっと、一緒に居たい。
そう言った旬ちゃんは、そっと私の体を引き寄せ、抱き締めた。
「……なんで、私なの……? なんで高橋さんじゃないの……?」
あんなに楽しそうに笑ってたのに、幸せそうだったのに、どうして『私』なの?
私と一緒に居る時よりも、ずっとずっと楽しそうだったのに……。
「『なんで』ばっかり うるさいよ、馬鹿ミサ」
「……だって、わからないことだらけだから……」
「ミサが好き。 ってハッキリしてんじゃん」
「……でも、高橋さんと幸せそうだったのに……」
「んなことねぇだろ、俺はいつもあんな感じだ」
「……それって、他の人とも常にあんな感じってこと? 楽しそうに笑って、幸せそうにサンドイッチ頬張って、ベタベタくっつくのが基本なの?」



