「……なんで、声かけなかったんだ?」
……『なんで』?
ここでもまた、それを言うの……?
「……言わなくてもわかるでしょ」
「わからないから聞いてんだよ」
「……旬ちゃんは高橋さんのことが好きなんだよね? だからあんな風に笑って、楽しそうにしていたんだよね?
……それを見せつけといてさ、『わからない』なんて可笑しいじゃん。 わかってるくせに私に聞くなんてどうかしてるよ。
こっちこそ『なんで』って言いたいよっ……!!」
……また、私たちの雰囲気は最悪だ。
周りに人が居ないからさっきよりもマシだと言えるけれど、それでも、状況はさっきよりもヒドい。
「……旬ちゃんは なんでここに居るの? どうして私の隣に居るの?
せっかくの学園祭なのに、なんでこんなところに居るの?
好きな人と一緒に回ればいいじゃない。 なのに、どうして私なんかに構うの?」
「……ミサ」
「私は大丈夫だって言ったでしょ。 大丈夫なんだから もう放っといてよ。
私のそばに居ないで。 もう来ないでよ。 私は旬ちゃんのことが嫌いなの。 大嫌いなの」
「……」
「これ以上一緒に居たくない。 だからどこかに消えて。 もう、私のところに来ないで……」
ボロボロ、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
……大嫌い。
本当は大好きなのに、大嫌いと言ってしまった。
本当は近くに居たいくせに、『そばに居ないで』と、『もう来ないで』と言ってしまった。
大好きなのに、本当のことが言えなかった。



