「うーん……謎だ……」

「何が謎だって?」

「いや、だから……って、えっ!?」


「うん?」



不思議そうな顔をしながら首を傾げる その人は、

……紛れもなく 旬ちゃんだった。



「ど、どうしてっ……なんでこんなところに居るのっ……!?」

「『新選組カフェ』でジュース飲んでた」

「……高橋さんと、一緒に……?」



……って、私ってば何 聞いてるのっ。

旬ちゃんが誰と居ようが関係ないじゃん。 高橋さんと一緒だったとしても、私には関係ないことじゃんっ。



「いや、一人だよ」

「……え?」

「一人でミサを待ってたんだ」



……私を、待ってた……?


真っ直ぐに私を見る旬ちゃんを、私もまた真っ直ぐに見つめ返した。



「……なんで私を待ってたの……?」

「ダメだった?」

「……ダメだよ。 だって、私と一緒に居るなんて時間の無駄じゃん。
高校最後の学園祭なのに、私なんかと一緒に居たら旬ちゃんの時間が勿体ないよ」



……どうしよう。

泣かないって決めていたのに、目に涙が溜まっていく。

堪えなきゃ。 我慢しなきゃ。 泣いた顔なんて、絶対に見せちゃダメ……。






「……私は一人で大丈夫だから、旬ちゃんは自分の好きなことをして?」



涙をグッと堪えて、笑顔を作る。

大丈夫。

私は大丈夫。


何度も繰り返してきた言葉を頭の中で唱えた時、不思議と気持ちが落ち着いた。

……もう大丈夫。 いつも通りで居られる。


そう思った時だった。