「そういえばさ、ミサっち」
「ん?」
「明日……旬ちゃんと回るんだよね?」
「……」
歩夢の言葉に どう返そうか迷う。
ううん、本当は迷う必要なんかないんだ。
……旬ちゃんは高橋さんと一緒に居る方が幸せだから、私は一緒に回らない。
そう言えばいいだけなんだ。
「私、旬ちゃんとは回らないよ」
「でも、好きなんだよね?」
「……うん、好き。 幼なじみ以上に好き」
「じゃあ回ればいいじゃん。 元々一緒に回る予定だっただろ?」
歩夢は、真っ直ぐに私を見ていた。
いつの間にか全員の歩みが止まっていて、みんなが私の言葉を待っている。
「……私、旬ちゃんと今までみたいに笑っていたいの」
1歩、2歩。
立ち止まったままの3人を残し、ゆっくりと歩き出す。
「旬ちゃんに彼女が出来たあとも笑っていたいの。 だから一緒には回らない。
一緒に回ったって虚しいだけじゃん。 叶わないってわかってるのに、悲しくなるだけじゃん」
「俺も正人も晃太兄も、叶わないってわかってたけどミサっちと一緒に居る。 でも 虚しくはないし悲しくもないよ。
……なぁミサ、明日は旬ちゃんと回れよ。 旬ちゃんは高校最後の学園祭なんだぞ?」
「……最後だからこそ、旬ちゃんには後悔して欲しくないの」
高校最後の学園祭を、楽しい1日にしてもらいたい。
一生忘れることのない、幸せな日にしてもらいたい。
……その場面に、私は必要ないんだ……。



