「……旬ちゃんは、私のよきお兄さんで……朝が苦手な私を、いつも起こしに来てくれてたの」



政宗さんに話してるというか、それは独り言のようなものだった。



「学校でも、会えば必ず笑って話すし、放課後はいつも私の教室に来てくれて、一緒に帰ってた。
……学園祭の準備があったから、最近は会うのも少なかったけど……それでも、メールして一緒に笑い合ってたんだ」



何故だろう。

旬ちゃんと過ごした日々が、今はただ、懐かしい。



「……学園祭が終わったら、またいつもの私たちに戻るんだって思ってた。
だけど もう戻らないんだね……。 旬ちゃんは、あの人と一緒に居る方が凄く楽しそうな顔してる」



幸せそうな顔してる。

旬ちゃんは今、幸せなんだ……。



「ミサちゃんは、旬のことが好きなんだね」

「……え……?」



政宗さんが、私の頬を優しく撫でる。


……あれ。

私、泣いてる……?



「いつも一緒に居たから気付いてなかっただけで、ほんとは旬のことが好きだったんだよ」

「……旬ちゃんのことは好きです。 でもそれは、『幼なじみ』だから……晃太くんや歩夢やマーくんと同じように、旬ちゃんのことも……」

「じゃあどうして泣くの? ただの幼なじみ相手に、ミサちゃんはなんで泣いてるの?」


「……」

「ミサちゃんは旬が好きなんだよ。 独り占めしたいって思ってるんだ。
『幼なじみだから』じゃなくて、『兄貴だから』でもなくて、『好きだから』泣いてるんだよ」



……私は、旬ちゃんが好き……。

幼なじみ以上に、旬ちゃんを想ってる……?



「アイツとの時間は、他の奴と過ごす時よりも きっと心地よかったと思う。 『ずっと一緒に居たい』って、思ってたはずなんだ」