「……ありがとう、歩夢。 晃太くん、ありがとう……」
涙を拭いながら言う私に、二人は満面の笑みで応える。
そしてそのあと、歩夢は私の後方へと視線を移した。
「お、やっと来たっ!! おーい、正人っ!!」
ニコニコ顔で大きく手を振る歩夢。
その先に、出店で買った食べ物を両手に持つマーくんの姿が見えた。
私と目が合うと少しだけ驚いたような顔をし、その後マーくんは、歩夢へと無言で蹴りを入れた。
「ちょ、なんで俺を蹴るんだよっ」
「ミサを泣かせたのは、どうせ歩夢だろ?」
「違うって、俺は泣きやませた側っ。 泣かせたのは晃太兄っ」
「どっちでもいいよ別に」
「どっちでもいいなら晃太兄を蹴れよっ」
眉間に しわを寄せてガンガン蹴り続けるマーくん。
歩夢は痛そうにしながらも、何故か笑顔。
そばに居た晃太くんも笑っていて、そして私もまた 笑顔になることが出来た。
「マーくん、全部私のせいなの。 だから歩夢を責めないで?」
「じゃあミサの分を歩夢に食らわせる」
「あー……うん、じゃあよろしくお願いします」
ペコッと頭を下げる私に『なんでだよっ』と笑う歩夢。
『さすがミサだねっ』と晃太くんは笑って、マーくんは『むしろ、さすが俺?』と首を傾げる。
なんだかちょっとズレたようなやり取りをしながらも、私たちは笑い合っていた。
いつもと同じ、『幼なじみ』としてのやり取りだ。
「やっぱりミサっちは、そんな風に笑ってるのが可愛いよ」
「うん。 ミサは楽しそうに笑ってるのが1番だよ」
無邪気にVサインを出す歩夢と、優しく笑いかける晃太くん。
そして……、
「……俺はいつも隣に居る。 そう言っただろ?」
……隣に座ったマーくんは、食べ物のパックを歩夢に渡したあとに微笑んだ。
ありがとう、マーくん。
歩夢も晃太くんも、みんなありがとう……。
みんなの笑顔を受けながら、私は小さく頷いてからマーくんの手をそっと握り締めた。



