……私、なんでこんなに馬鹿なんだろう。


マーくんはいつだって私のそばに居てくれる。 いつだって話を聞いてくれる。

いつだって、『答え』へと導いてくれる。


なのに私は、何も知らずにそばに居た。

『幼なじみ』というバランスを、無意識ながらに取ってしまっていた。



「もうすぐ交代の時間だから、そろそろ戻ろうか」



優しく手を伸ばすマーくんを、静かに見つめる。

その手に自分の手を重ねた時、私は小さく小さく言葉を放っていた。



「……今日の朝、マーくんと手を繋いだ時……私はあの時、凄くドキドキした。
どうしてドキドキしたのかは、自分でもよくわからない。 でも私……ドキドキしてたんだ」



こんなことを言ったって、何かが変わるわけではない。

マーくんを傷つけてしまったことは変わらない。 ううん、もっともっと傷つけてしまうかもしれない。

だけどそれでも、マーくんに伝えたかった。



「……マーくんと一緒に回ることが出来て、本当によかったと思ってる。 マーくんだったから、私はドキドキしてたんだと思う」



私の言葉にマーくんは微笑み、そのあとに『よかった』と小さく言った。



「少しでもミサの心に残ることが出来て、本当によかった」

「……ごめんなさい……」

「ううん、大丈夫だよ」



……マーくんはいつもと同じように私の隣に居るし、私を見て微笑んでくれている。

私はそれに微笑み返すけれど、そのたびにチクリ チクリと胸の奥が痛んだ。


私とマーくんの天秤はバランスが取れているように見えるけれど、ほんの少しだけ……本当にほんの少しだけ傾いてしまった。

それに気付きながらも、私たちは気付かないフリをして過ごしている。


だからこそ、胸の奥がいつまでもいつまでも痛み続けた。