……変わらない?

ていうか、5歩って……私、そんなの全然……。



「昨日の夜、二人きりの教室で抱き締めたり、帰り際に手を繋いだり。
今日は今日で『二人で行こう』って誘って、半ば無理矢理に手ぇ繋いだりとか、色々したつもり。
俺としては結構 距離を詰めたんじゃないかって思ってるんだけど、ミサはそんな風には感じてないだろう?
……だから、これが俺とミサの距離なんだなって思う」



これが、私たちの距離……。


……私は昨日、マーくんに抱きついた。

でも私は全然 何も、意識とか そういうのはしていなかった。


『凄い』『偉い』と馬鹿みたいに褒めて、犬の頭を撫でるかのようにマーくんの頭を撫でた。

そのあとに抱き締め返された時も、当たり前のようにそれを受け入れていた。


……男女が抱き合ってるのに、私は全然何も感じなかったんだ。



「俺が近づいてもミサは全然 動じない。 バランスが保たれてるのはいいことだけど、保たれすぎてるのは ちょっとショックだったかも」

「……マーくん、私……」

「いいよ、気にしないで。 大丈夫」



……マーくんはいつもと同じように微笑んでいる。


だけど私は、笑顔を返すことは出来なかった。