「ミサ」
すぐに私のところに来たマーくんは、いつもよりも優しい笑顔を見せた。
「こうなると思ってた」
「……え?」
「朝の時間のことは誰も何も言わなかっただろう? だから、この時間はミサが一人になると思ってた」
……確かに この時間のことは全然何も話していなかった。
ていうか、2時間 暇なことをすっかり忘れていた。
「……マーくんってば、気付いてたのなら もっと早くみんなの前で言ってくれればよかったのに」
「ごめん」
「歩夢は? 出会いを求めて もう行っちゃった?」
「うん、去年と同じ」
あー……やっぱりもう行っちゃったんだ。
そのまま午後も戻ってこなさそう。 11時からの仕事もサボりそう……。
「ミサ、一緒に行こ?」
「……へ?」
「学園祭はもう始まってる。 俺と二人で行こうよ」
そっと手を差し出したマーくんが、私の手を握り締めた。
……昨日だって手を繋いで歩いたのに、今はなんだか、凄くドキドキする。
大勢の人が居るところで手を繋いでるから?
マーくんがいつもよりもずっとずっと優しいから?
それとも、学園祭という普段とは違う雰囲気のせい?
よくはわからなかったけれど、それでも私はマーくんの微笑みに応えるように笑い、隣に並んで歩き出した。



