耳の奥を冷たい風が吹き抜ける。
私は小さなピンク色の箱を、両手でそっと包んだ。
私の約一年ぶんの想いを詰めた、小さな甘いチョコレート。

天野奈都、16歳。
私は十六年の人生の中で、初めて「本命チョコレート」というものを作った。
そして、今日それを渡す時が来た。
手の中の箱を見つめる。
想いを込めて。
歩き続ける。
彼はきっと待っている。
私の脳裏をそっと、今日の放課後の会話がフラッシュバックした。