休み時間になると、僕の隣には人が群がった。
そりゃこんな美人が転校してきたら噂になるだろう。
「大和、こんな美人が隣なんて超ラッキーやんか!
うらやましい限りやでー!」
謎の関西弁で僕に話しかけてくるのは前の席の二宮 快斗。通称ニノ。僕の親友だ。
僕みたいな変わり者に最初に話しかけてくれたのがニノだ。
クラス一の人気者がクラス一の変わり者の親友なんてだいぶ珍しいと思う。
まあ、コイツもある意味変わり者なのだろう。
「あー、そうだな。」
「なんやねん、テンション低いわー。」
「うるせー、ねみーんだよ。」
ニノは唇を尖らせて文句を言っていた。
僕がそれを軽くあしらっていると、綺麗な声が僕に話しかけてきた。

「あの…、校内案内してくれる?」
隣の席の彼女だ。
周りの男子はみんな、「なんで大石ー!」「俺が案内するよ!」「いやいや俺が!」などと争いが繰り広げられていた。
僕は断ろうと思ったが、ニノがいけいけ!とばかりに背中を押してきたのでしぶしぶ校内を案内した。
うへぇ、男子達からの殺気を感じる。

「んで、ここが第一音楽室でー…。」
ここの学校は無駄に広いので僕でもたまに迷ったりする。
だから僕も1つ1つ確認しながら案内をした。
「ねぇ、大石くん?」
彼女が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「あの、名前で呼んでいい?」
わお。
僕が思いがけない一言にびっくりしていると、彼女はあわてて
「む、無理だったらいいの!本当に!」
と言った。
その姿が美雨を思い出させて、つい
「あ、いいよ。」
と言ってしまった。
彼女はホッとした表情を浮かべて、
「ありがとう!大和。
私のことは美優って呼んで!」
と僕に言った。
その笑顔が美雨にそっくりで思わず抱きしめそうになった。
そんな事をやっている内に、学校案内は終わった。
教室に帰ると男子達に思いっきり睨まれた。殺気がこもっていて、少しだけ死を覚悟したりもした。
「大和ー!どうやった??」
ニノがニカッと笑い、話しかけてきた。
「どーもしねーよ」
「ウソやん、あんな可愛い子と長時間一緒にいて、何もない訳ないやん!
オレやったら、襲うくらいはしてるで!」
…少しは自重しろよ。
アホかこいつは。
「そんなこと言ったら美優がびびるだろ。」
「お?何名前で呼んでんねーん!」
…こいつ…。
「そんなんじゃねーよバカ。」
「嘘やーん。お前が名前で呼ぶなんて考えられへんことやで!?お前今名前で呼んでる子、ウサミちゃんとあの幼なじみの美雨?ちゃんくらいやろー!」
なんとなく美雨をこいつが呼んだことことに腹がたって、少しキツィ言い方で、
「ニノ。うるせぇ。」
と言った。ニノも僕が怒ってることを分かったようで、
「…すまん。」
と言った。
ちょっと大人気なかったか…?
「いや、僕こそごめん。」
やべ、しらけてしまった…。
すると、その空気を感じたのかニノが
「にしても、ウサミちゃん可愛らしなぁ!オレちょっとウサミちゃん狙ったろかなー。」
プレイボーイめ。死語か?
「いんじゃねーか?頑張れ。」
なんとなく機嫌が悪くなったような気がした。
ニノは
「…冗談や。」
と言った。