「はぁ…。いねーなぁ…。」
僕は、人混みをかき分けて、必死に探していた。
「おーい!美羽ー!」
隣では美優が名前を呼んで、必死に探している。

うえーん…。

泣いてる声が聞こえた。
「美羽ー?」

屋台の呼びかけや、お神輿の勇ましい掛け声、人々の話し声に紛れてよく聞こえなかったが、確かに聞こえた。
鳥居に続く、その道にしゃがんで泣いている子が見えた。
美優によく似た、真夜中のような黒髪が何よりの目印だった。



『『見つけた。』』


美優と僕は、そう言って、娘の美羽を抱き上げた。

「やっぱり、あなたは探すのが上手ね。」

「大事な人は、分かるんだ。」
「綺麗な、綺麗な、黒髪が目印だよ。」


「探しだしてくれて、ありがとう。」

「何度でも、探しだすよ。」

美優は、笑った。
それを見て、美羽も笑った。

同じ場所に、えくぼが見えた。




fin