急いで靴を履くと

桜が散り始めたトンネルをくぐり
学校に向かう。


『行ってらっしゃい!』


『行ってきます。』





心汰はおばちゃんの方をチラリと見たけど

手も振らずに向き直した。



そして今日も
耳を塞いで遠くを見た。


まるで何か
聞きたくないものが聞こえているようだった。



『心汰?』


「え?」

『何か聞こえるの?』


心汰は耳を塞いでいた手をはずした。




「蘭汰の声が。聞こえるんだ。」



『蘭汰?』


「うん。」

何でだろう?


『蘭汰は心汰を見守ってくれてるんだね!』



怖がることなんてないのに。


『蘭汰は心汰が大好きだったから。』





心汰は黙ったままだった。


『ねぇ。今日の給食一年生と食べるんだよ!』



「なかよし給食の日だからね。」


『残したら食べてあげるんだ!』

「陽菜ちゃん腹ペコすぎるんだよ。」