「…嘘…?なんのことですか」




あゆみがぽかんとした顔で尋ねる。突然そんなことを言われても、なんのことやらさっぱりわからない。




「バスの中で、俺にメールしただろ?隣は宮間さんですって」



「ああ、ええと、はい」




そういえばそうメールを返した気がする。隣は誰だというメールに返事をしただけで、何も嘘なんてついてない。あゆみは頭の中がハテナだらけだ。




「…隣に、笹原が座ってたじゃないか」




「えっ?」




(そういえば、そうだった。宮間さんとマツさんが喧嘩して…マツさんに席をとられて笹原主任の隣に移動したんだっけ…。でもなんで、小林部長がそれを知ってるんだろ…?)




「いろいろと事情があって、移動したんです。…なんで知ってるんですか」




小林部長は少し黙って、より一層不機嫌そうな顔になった。
綺麗な顔が怒ると怖いんだなとあゆみは思った。




「見たから」




「えっ?」




「車で追い越したときだよ。目が合ったじゃないか。お前のにやけた顔がばっちり見えたぞ」



あゆみはあいた口がふさがらない。あの一瞬で、そんなことまで見ていたなんて。

そう確か、あのときはちょうど笹原主任に仕事のことで褒められてうれしくて…




(でもにやけた顔って…ひどい…)




「あいつは、笹原はやめとけよ」




「…えっ?」




(部長…なんか勘違いして…)