「豆柴、お茶」
(…?)
小林部長は勝手に座椅子に腰を下ろしている。まるで自分の部屋か社長室にいるときのように、あゆみに言った。
「聞こえなかったか?豆柴、お茶、いれてくれ」
「えっ?あ、お茶ですね?はい、ええと、今すぐに用意します」
あゆみはあたふたと備え付けのポットにお湯をわかし、お茶葉と急須を準備した。
小林部長は、あゆみに向かって紙袋を差し出した。
「これ、お前にやるよ」
(えっ…何…?)
あゆみは恐る恐る紙袋を受け取って、中を覗いてみた。すると、中には小さな四角の箱が入っていた。
「あ…開けていいんですか」
「ああ」
紙袋から取り出した、箱の蓋をぱかっと開くと、中には桜色の小さな湯飲みが入っていた。
(か…かわいい…)
「あの…小林部長…、これ、本当にわたしに…?」
「ああ。マグカップの、お礼だ」
(小林部長…)



