おかえりなさい、と言いかけて、あゆみはその場で固まってしまった。




(小林部長…!…な…なんで?!)



なんと言ってよいのかわからず驚きで口をパクパクさせるあゆみを見下ろして、小林部長はふ、と笑った。




「ただいま。豆柴くん」




「おかえりなさい…ってそうじゃなくて…。ええと…あの…なんでしょうか?」




あゆみはドアを半分開いた状態で、ドアに体を隠すようにして言った。すっぴんなのは仕方ないとして、浴衣姿を見られるのも少し恥ずかしい。




「いまひとりだろ?入っていいか?」




「…え」




無理です。なんて言って良いものなんだろうか。

あゆみが返事に困っているうちに、小林部長はドアを押し開いて部屋の中へと入って来てしまった。



「あっ…ちょっと…あのっ!」



(「入っていいか?」って聞いたじゃん!拒否権ないなら聞かないでよ!)



心臓の音がうるさい。あゆみはどうしたらよいのかわけがわからなかった。



「あの、小林部長…?」



ドアがガチャリと閉まる音がする。オートロックのかかるウィーンという音も。



あゆみは目の前にいる浴衣姿の勝手な男を恐る恐る見上げた。