女の人にしては背が高い宮間さんと、その宮間さんよりさらに背が高いマツさん。

マツさんの後を追いかける宮間さんはなんだかとてもかわいくて、あゆみは幸せな気持ちになった。



部屋の座椅子に腰掛けて、ふうと一息ついてみる。お盆の上にあるお茶菓子を食べ、窓から外の景色を眺める。

部屋の中まで襲いかかって来そうな新緑は、生命力という言葉がぴったりだ。


なんて贅沢な時間なんだろうとあゆみは思った。

ほんものの正社員というのはこんなにも、心に余裕があるものなのだと初めて知った。
フリーターのときは無我夢中で、自分の時間を切り売りして生活費に変えていた。
休むことはその分の稼ぎが減ることとイコールで、サービス残業をしていた頃は更にひどかった。働いても働いてもお金にならず、自分の時間が減るだけだったのだから。




コンコン、コンコン、

とドアをノックする音が聞こえる。



(宮間さん、もう帰ってきたのかな?まさか、またすぐに喧嘩したんじゃ…)



仕方ないなぁと呟いて、あゆみが立ち上がる。オートロックなので中から鍵を開けてドアを開く。




「おかえりなさ…」