「小林部長はさ、あのルックスだから当然モテるんだけどさ」



お土産コーナーを諦めて部屋へ引き返す最中に、宮間さんは唐突に言った。

あゆみは黙って左隣を少し見上げる。宮間さんのちょっと尖った顎を見ながら、言葉の続きを待った。



「小林部長ってね、あんな見た目してるくせに、誰かと付き合ってるだとか、彼女がいるとか、そういう噂が今まで一切なかったんだよね。まぁ、あそこまでルックスがいいと女の子の方も引いちゃって、憧れる子はいても、あからさまにアプローチする子なんかなかなかいないみたいでさ」



「だけどさ、」と宮間さんは続ける。



「エリカ様だけは違ったんだよ。彼女もあの見た目だし、自信もあって、仕事も完璧で、あからさまにアプローチしても誰にも文句言わせないっていうかさ」



あゆみは黙ってそれを聞いていた。

小林部長とエリカ様はお似合いだ。いくらエリカ様の性格が悪くたって、彼女以上に小林部長に釣り合う人はいないと誰もが思っているんだろう。

実際のところ、あゆみも初めてふたりを見た瞬間に、美男美女だと感激したくらいなのだから。



(じゃあ、なんでこんなに嫌な気分なんだろう。あのふたりが付き合っていたって、わたしには関係ないじゃない…)