すっと背の高い浴衣姿の男の人。モデル並みにバランスのとれた立ち姿は、少し離れていてもすぐに見つけられてしまう。




(…小林部長…、浴衣、めちゃくちゃ似合うなぁ…。ていうか、イケメンは何着ても様になっちゃうんだな…)




浴衣姿の小林部長は、お土産コーナーのお茶碗や湯のみといった焼き物が並べてあるあたりで腕組みをしてなにやら首を捻っている。




「あ、小林部長じゃん」




宮間さんがそう言って近寄ろうとしたそのとき、あゆみは小林部長の隣にある人が寄り添っていることに気付いた。


長い髪を色っぽく結い上げて、浴衣姿が小林部長に引けをとらないほど様になっている綺麗な女性。彼女もまた、少し離れた場所からでもすぐに誰かわかってしまう。




「おっと、エリカ様も一緒かぁ」




宮間さんも彼女に気付いて呟く。

どこから見ても色っぽい湯上がり美人風メイクが施されていて、さっき大浴場で目撃した彼女とはまるで別人だ。


エリカ様は、小林部長に寄り添うようにして色っぽく首を傾げたり、小林部長の腕に自分の腕を絡ませたりとかなり大胆だ。



「これはお邪魔かな…?ねえ、あゆみちゃん」



「あ…はい…そうですよね」



あゆみはなぜか、胸がきりきりと痛んでいた。さっきまで、あんなにも楽しかったのに、どうしてこんなにも苦しいような悲しいような気分になってしまったのだろう。




「部屋に戻ろっか。また後で来ようよ。なんか気まずいしさ」



呆れたような顔で宮間さんが言い、あゆみは小さくはいと頷いた。