タオルでこそこそと隠しながらあゆみも服を脱ぎ、籠にしまった。




ガラガラと大浴場の引き戸を開けると、檜の香りと湯気と熱気があゆみを包み込んだ。



「いいねぇー」



宮間さんはタオルを片手に隠しもせずシャワー台へ向かった。湯気に隠れて見えなかった人影が、温泉の中に浮かび上がる。

白くて綺麗な首筋、背中。まとめた髪が少しかかったうなじ。後ろ姿でさえ魅力的なあの人は間違いなくエリカ様だ。




「なんでひとりで来てんだろ」




体をタオルでゴシゴシと洗いながら、宮間さんは言った。あゆみも宮間さんの隣で体を洗う。

髪を洗ってクリップでとめ、宮間さんと一緒に露天風呂のほうへ向かった。




すると、湯気の中から立ち上がるエリカ様の白い後ろ姿が見えた。




「ワァーオ!峰不二子じゃん!すごいナイスバディ」



宮間さんがまるで男のような声をあげると、美しいシルエットが驚いたように振り返った。豊かな胸、くびれたウエスト、小さいお尻に細い脚。まさにパーフェクトボディ。




「え?…あれ、誰?」



まさにエリカ様に間違いないはずのパーフェクトボディの持ち主は、振り返るとまったくの別人だった。

峰不二子の体に、まるでこけしか平安時代のお姫様のようなのっぺりとした薄い顔がのっている。




「え…エリカ様…??」



驚いて目を見開くあゆみと宮間さんに気付いたのか、こけし顔の峰不二子はハッとしたような顔で目を逸らした。