ふたりが大浴場の脱衣所にたどり着くと、「あ、先客だ。先越されたー」と宮間さんが残念そうな声で言った。
「ん…?この匂い…」
持って来た浴衣を脱衣所の籠にいれながら、宮間さんが鼻をひくひくさせている。
「どうかしたんですか?」
「匂いだよ、香水の。この匂い、どっかで嗅いだことない?」
あゆみはクンクンと脱衣所の匂いを嗅いでみた。「あ…」
「ね?これエリカ様の香水じゃん」
甘いフローラル系の香りには、あゆみも嗅ぎ覚えがあった。ということは、大浴場にいるのはエリカ様ということだ。
脱衣所には荷物の入った籠はあゆみと宮間さんの他にはひとつしかない。
「エリカ様、ひとりで温泉入ってんのかな」
宮間さんはTシャツを脱ぎながら言った。細いけれどうっすら筋肉のついた二の腕と、真ん中に線の入った腹筋マシンの宣伝に登場しそうなお腹を見て、あゆみは思わず赤面した。
(か…かっこいい…。なんか脱ぐの恥ずかしくなってきちゃった…)
自分のぷよぷよとした二の腕や腹筋のかけらもないお腹とは大違いだ。思わず見惚れるあゆみに宮間さんは言った。
「ちょ…!あゆみちゃん!見過ぎだって!やめてよもう!」
ぽいぽいと服を脱ぎ捨てた宮間さんは既に全裸になっている。なんて引き締まった体なんだろう。



