「わぁ!いい部屋じゃん!ねえあゆみちゃん?」




「本当ですね!すごく素敵!」




ふたりに割り当てられたのは、広くはないけれど小川のせせらぎと木々が揺れる音だけが聞こえてくるような静かな和室だ。
小さな床の間には花が活けられていて、窓の外は山の中。虫が入ってきそうで窓が開けられないのが唯一の難点ではあるけれど、丁寧に掃除がされた部屋は景色も居心地も最高だった。




「ねえねえ!さっそく温泉入らない?!」



宮間さんが二人分の浴衣を取り出しながら言う。




「あゆみちゃんはSSだね。あたしはMかな」



はいどうぞ、と宮間さんはあゆみにSSサイズの浴衣を手渡した。



「ここの大浴場、けっこう有名みたいだよ!行こ!」




「あ、はい!」




この会社に、宮間さんがいてくれて本当に良かったとあゆみは思った。彼女といると、普段はネガティブな自分が嘘のように楽しい気分になる。

社員旅行などとは無縁だった三年半を思い出し、正社員でいられる嬉しさを改めて噛み締めた。