「おはよう、あゆみちゃん」
「お…おはようございます…」
(いきなりあゆみちゃんになってるし…面接のときと雰囲気が違うような…)
面接のときはカッターシャツにスラックスだった彼は、今日はその上から作業着のジャケットを羽織っている。なんの変哲もないシンプルな淡いブルーの作業着なのに、妙に決まっているように見えるのは、彼の長身と顔の小ささのせいかもしれない。
「やっぱり、あゆみちゃんはそうだと思った」
彼はいきなりあゆみを上から下まで眺めたあと、ふっと笑いながら言った。
「やっぱりって…何のことでしょうか」
「その格好だよ。真面目そのものって感じだ」
(やっぱり地味過ぎたのかな…でも…)
あゆみは改めて自分の服装を眺めた。仕事をしに来ているのだから、これでいいじゃないか。真面目で何が悪いのだ。
「すみません。ご期待に添えなくて…」
「いや、いいよ。むしろそのほうがそそる」
「…は…はあ…」
(これって、立派なセクハラだよね…)
なんなんだろう、この人はとあゆみは思った。
これぐらい普通なんだろうか。顔がかっこよければ何を言っても許されると思っているのだろうか。
冗談にしても、趣味が悪すぎる。
「俺は、好きな格好で来ていいよって言って派手な格好で来る女より、笑えるくらい地味な格好で来る君みたいな女が好きだ」
ドキン、と胸が高鳴った。
そんな風に言ってもらえるなんて思ってもいなかった。
セクハラまがいの冗談だとわかっていても、なんだか少しだけ、認められたような気がして嬉しかった。
あゆみは濃紺のタイトスカートの裾をぎゅうと握りしめた。



