「バカって言うな!サヤだって俺と大して学歴変わんねーじゃねぇか!」
「何言ってんだか。ベースの脳みそのレベルがそもそも違うのよっ!クーリングオフの意味もわかんないアホマツなんかと一緒にすんな!」
「なんだとぉーーー?!」
『皆様、長らくのご乗車お疲れさまでした。まもなく、到着でございます』
アナウンスが流れると、生い茂る木々の間から、いかにも老舗といった風格の、美しくも味わいのある温泉旅館が姿を現した。
バスの車内では、あちこちから「おおっ!」とか「あらまぁ素敵」とか、「今年は奮発したわねえ!」なんていう年配社員の呟きが聞こえている。
美しく砂利が敷き詰められた駐車場には既に小林部長の黒いベンツがとまっており、その他にも何台かの観光バスが並んでいた。
「高そうな旅館ですね…」
あゆみが呟くと、笹原主任がそうだねと答えた。
「今回は、社長の最後の社員旅行だしな」
(ああ、そっか…。周さんは中国に帰っちゃうんだよね…)
宮間さんが、あゆみと笹原主任の間ににょきっと顔を出す。バスが完全に停車して、わらわらとみんなが立ち上がる。
「今回の部屋割り、あたしがしたの。あゆみちゃんとあたし、二人部屋にしといたからね!思う存分楽しも!」



