何か言葉を返さなければとあゆみがテンパっているところに、ちょうど良いタイミングでバスの車内に運転手のアナウンスが流れた。
『皆様、長旅お疲れさまでした。あと少しで、旅館に到着でございます。車内にお忘れ物などございませんよう、お気をつけください…』
パートのおばちゃんたちはゴソゴソとお菓子やお茶を片付け始め、笹原主任も立ち上がり、既に酔っ払いだらけの営業部若手メンバーに酒缶や空き瓶などのゴミを綺麗に片付けるようにと指示している。
アナウンスで目が覚めたらしい宮間さんとマツさんは、起きたとたんにまた何もなかったかのように、わけのわからない言い合いを始めた。
「ったく!なに寝てんのよ!肩貸したんだからレンタル料払いなさいよ!」
「好きで借りたんじゃねえよ!レンタル料なんか払うかバカ野郎!」
「なんですって?!こっちは気使って動かないようにしてやってたのに感謝しなさいよ!」
「はぁ?!サヤも寝てたじゃねえかよ!」
「うるさい!さっさとレンタル料払え!このアホマツ!」
「なんだとぉーー!?好きで借りたんじゃねえんだから無効だよ!クーリングオフだクーリングオフ!」
「よく知りもしない言葉使ってんじゃないわよバカのくせに!」



