普段は男の人の話なんて一切しない、恋愛なんて興味がないといった雰囲気の宮間さんに、こんな相手がいたなんてとあゆみは思った。
マツさんは、きっと宮間さんが好きなんだろう。そしてきっと宮間さんも、マツさんのことは特別な存在だと思っているはずだ。
だけど、それ以上に踏み出さないのはお互いのことを異性としてではなく、仲間としても大切に思っているからなんだろうなとあゆみは勝手に考えた。そんな2人が羨ましくもあり、少しじれったい。
「宮間さん、いいな」
(わたしも好きな人とあんな風に、何でも言い合える関係になれたらいいのに…。ていうかまず、好きな人もいないってどうなんだろ…。女として枯れてる…?)
「羨ましい?」
笹原主任がふっと笑いながら尋ねる。あゆみははいと頷いた。
「羨ましいというか、もうなんか、見てるだけで幸せって感じです」
あははっと誤魔化し笑いをするあゆみを笹原主任の優しい視線が捕まえた。
(…え…?)
「そんな相手が欲しくなったら、いつでも言って。喧嘩でも、デートでも、なんでも付き合うよ」
「さ…笹原主任…」
笑って誤魔化せないほどの小さな声で、冗談とは思えないほどの真面目な優しい視線で、笹原主任があゆみを包んでいた。
まるで少女漫画に出てくる王子様キャラのイケメンヒーローのように、笹原主任の背景にバラの花とキラキラの星が見える。
「これも、小林部長には内緒な」
笹原主任はニコッと微笑んだ。



