「まぁまぁ、二人とも、落ち着いて」




今にも取っ組み合いになりそうな二人に割って入ったのは笹原主任。




「せっかくの社員旅行なんだし、みんなの迷惑になるから、ここは高松さんも座って二人で静かに落ち着いて話をしたらどうかな?」




「俺は、そのつもりだけど。な?サヤ?」



マツさんはビールを一口飲むと、宮間さんに言った。




「あたしはアンタと話すことなんてない」



「まぁまぁ、とりあえず、桜庭さんはこっちの席が空いてるから、こっちにしばらく移動して。二人で静かに話をさせたほうがいい」



笹原主任は車内を見回して言った。二人のどなり合いのせいで、合コンは中断しているし、パートのおばちゃんたちはあからさまに迷惑そうな顔でこっちを見ている。




「わ…わかりました。あの…マツさん、どうぞ…」




あゆみは申し訳なさそうに立ち上がった。車内の視線が痛い。


(…騒いでるのは宮間さんとマツさんなのにー!)




「サンキュー桜庭チャン!」




「あゆみちゃん、ごめんね。このバカのせいで」




「いえ、いいんです」



あゆみは、手招きをする笹原主任の隣の補助席に腰掛けた。