あゆみはトイレに行ったあと売店でペットボトルのミルクティーとガムを買い、宮間さんは屋台でイカ焼きとベビーカステラを買った。




「あゆみちゃんにあげる。さっきのチョコレートのお礼」



美味しそうなイカ焼きを豪快にかじりながら、宮間さんがあゆみにベビーカステラを袋ごと差し出した。




「えっ、こんなに、いいんですか?」




「いいよ、好きでしょ?ベビーカステラ。あたしの勝手なイメージだけどさ、あゆみちゃんはベビーカステラが好きっぽいって」




「あたりです!大好きです、ベビーカステラ!お祭りに行ったら必ず買います」




あゆみが言うと、宮間さんはハハッと笑った。




「よかった。なかなか似合うよ、ベビーカステラ。ほら、あーん」




袋からひとつ取り出して、あゆみの口元へ運ぶ。あゆみは慌てて口を開けてそれを受け取った。あたたかくてあまい、優しい味が口の中に広がった。




「おいひぃでふ」




「そりゃあよかった」




カステラを飲み込むと、あゆみは言った。



「宮間さんが男の人だったら、恋しちゃいそうです、わたし」



「そんな趣味ないよ、悪いけど」




ショートカットの髪が風にさらりとなびく。ひとつも飾らない宮間さんは、横顔がとてもきれいだ。わたしが男だったら、宮間さんに恋するだろうなぁとあゆみは思った。



「さ、バスに戻るよ!」