パーキングエリアに到着すると、ほとんどのメンバーは財布か煙草を手にざわつきながらバスを降りていく。既にほろ酔い気分の若手社員たちはいつもより何倍もテンションが高く、昼間であるにもかかわらず言動がなかなか大胆だ。



バスで始まっていた合コンではもうすでに、何組かのペアが成立しているらしかった。営業部の男性と事務の女性社員の組み合わせが大半で、宮間さんいわく毎年その大半は、この旅限定のペアで終わってしまうらしい。




「なんでかしらね、社員旅行になるとみんなテンション上がっちゃって、誰かとペアになりたがるんだよね。毎年そうだけど、ほら、あの二人なんか両方とも彼氏持ちと彼女持ちだよ?」



あゆみに耳打ちしながら宮間さんがこっそり一組のカップルを指差した。

たしか営業事務の水谷さんと営業の宮田さん。あゆみは頭の中で普段のふたりを思い出す。普段は仕事以外の会話をしているのを見たことがないから、さっきの合コンで仲良くなったのだろうか。




「なんか、すごいですね…」




あゆみはなんとコメントしていいかわからなかった。こんな風に堂々と、恋人のいる者同士が仲良く寄り添うようにしているのを見るのは不思議な気分だ。


誰もそのことに触れないのは、旅先での暗黙のルールみたいなものなのだろうか。